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Q&A

A社が販売している電気掃除機が、当社の電気掃除機の意匠に係る意匠権を侵害していると思われますので、意匠権侵害差止等請求事件を提訴しようと思いますが、その際の損害の賠償額の算定方法について説明してください。
 意匠権侵害差止等請求事件における意匠権侵害の損害額の算定方法については、意匠法39 条(損害の額の推定等)に規定されていますが、この規定は、民法709 条の不法行為に基づく損害賠償に関する特則であり、不法行為による損害賠償の請求をするときは、権利者が、@侵害者の故意又は過失、A権利の侵害行為、B損害の事実、C侵害行為と損害との因果関係を立証しなければなりませんが、知的財産権の対象は有体物ではなく、無形の情報であるため、その侵害の発見および防止は極めて困難ですし、その侵害による損害額は、市場における様々な要因に基づいて発生するため、その立証も極めて困難です。そこで、このような損害額の立証を容易にするために、現行法(昭和34 年法)の制定に際して、特許法102 条、実用新案法29 条、商標法38 条の規定と軌を一にして本規定が新設されたものです。

(1)1項(逸失利益)による算定
 意匠法39 条はその1項において「意匠権者又は専用施権者が故意又は過失により自己の意匠権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為を組成した物品を譲渡したときは、その譲渡した物品の数量(以下この項において「譲渡数量」という。)に、意匠権者又は専用実施権者がその侵害の行為がなければ販売することができた物品の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を、意匠権者又は専用実施権者の実施の能力に応じた額を超えない限度において、意匠権者又は専用実施権者が受けた損害の額とすることができる。」と規定されています。「ただし、譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を意匠権者又は専用実施権者が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとする。」とのただし書があります。意匠法39条1項は、意匠権侵害差止等請求事件において、請求事例の多い販売数量の減少による損害(逸失利益)額の算定方法です。
 以下に紹介する「エーシーアダプタ事件」(平成23年(ワ)第247号、東京地裁平成24 年6月29 日判決言渡)は、原告が、携帯電話用エーシーアダプタを製造販売している被告に対して、意匠権侵害に基づき、意匠法39 条1項に基づく損害額を主張した事件ですが、原告製品は、別売りの接続ケーブルを使用して携帯電話、スマートフォン等幅広い周辺機器の充電に使用することができるのに対し、被告製品は、特定の携帯電話に対応した接続ケーブルが一体化されており、他の機器の充電には使用できないものであることから、両製品は購入対象者が異なるなどとして、「販売することができないとする事情」があるものと認め、これに相当する数量は、被告製品の販売数量の9割(1割を認容)であるとして、損害額が減額されました。その他、意匠法39 条1項に基づいて損害額が算定された事件として、「測量地点明示プレート事件」(平成20 年(ワ)第8761 号、意匠権侵害差止等請求事件、大阪地裁平成22 年8月26日判決言渡)があります。
 なお、侵害行為により侵害者が受けた「利益」については、「純利益」、「粗利益」および「限界利益」等の見解がありますが、近年では「限界利益」が通説であり、本条における「単位数量当たりの利益の額」は、侵害行為がなければ権利者が販売できた製品の売上高から、その販売のために増加する経費を控除したものであり、具体的には、権利者の販売価額から原材料費ないし仕入れ額を控除し、さらに権利者製品の販売数量の増加に応じて増加する変動経費(下請けに支払った加工費用、運送費、保管費等)を控除して、単位数量当たりの利益額が算定されます。

(2)2項による算定
 意匠法39 条2項は「意匠権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の意匠権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、意匠権者又は専用実施権者が受けた損害の額と推定する。」と規定しています。
 意匠法39 条2項における損害額の算定においても限界利益説が一般的です。この限界利益説を採用して損害の賠償額が推定された事件として、近年では、「バリケード用錘事件」(平成26 年(ワ)第33834号、意匠権侵害に基づく差止等請求事件、東京地裁平成28 年4月15日判決言渡)があります。

(3)3項(実施料相当額)による算定
 意匠法39 条3項は「意匠権者又は専用実施権者は、故意又は過失により自己の意匠権又は専用実施権を侵害した者に対し、その登録意匠又はこれに類似する意匠の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。」ことを規定しています。すなわち、意匠権侵害行為があった場合、権利者に登録意匠又はこれに類似する意匠の実施に対し受けるべき金銭(実施料相当頷)を最低限の賠償額として認める算定方法です。
 実施料相当額を損害額とした事件としては、実施料相当額を15%と算定した「立体フェイスマスク事件」(平成23 年(ワ)第3361 号、大阪地裁平成24 年11 月8日判決言渡)と、実施料相当額を5%と算定した「蒸気モップ事件」(平成21 年(ワ)第13219 号、東京地裁平成23 年12 月27 日判決言渡)があります。
 「立体フェイスマスク事件」においては、「実施料率については、本件本意匠は、立体フェイスマスクの意匠であって繊維製品といえるところ、平成4年度〜 10 年度までの繊維製品の実施料率の平均値は6.1%であるが、原告が本件本意匠の開発に時間と労力を投入したこと、前記のとおり、本件本意匠と被告意匠とは類似し、商品としても、美容液を浸潤させて用いる立体フェイスマスクとして完全に競合する関係にあり、上記実施料率で使用許諾する関係にあるとは解されないこと、当該意匠は、商品の売上げに相当程度寄与していたといえることを考慮すると、被告意匠の使用に対する使用料率としては15%をもって相当と認める。」と判示されました。
 「蒸気モップ事件」においては、「@一般に、蒸気モップ等の民生用電気機械器具の需要者は、その意匠に対してもある程度の関心を有していることがうかがえるものであり、意匠による誘引力も一定程度存在すること、A本件意匠は、同意匠に係る物品(蒸気モップ)の構成全体に関するものであること、B本件意匠は、前記1のとおり、看者の視覚を通じた注意を惹きやすい部分について、公知意匠にはない特徴的な構成態様を有するものであること、などの事情を総合的に考慮すると、本件意匠の実施料率は、被告製品の売上高の5%とするのが相当である。」と判示されています。

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