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デザイン保護は 人と文化のバロメータ

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Q&A

円錐台状の生地にメレンゲで風景をあしらったケーキをデザインしたのですが、その周りを薄地の容器で覆っています。このような容器が付いている意匠は、意匠登録を受けることができますか。
 カップに入ったケーキのように、商品は、通常の流通状態では容器に入った状態で販売されています。酒、ウィスキー、飲料水は、瓶や缶、ペットボトルに入った状態で販売され、その状態で携行されて飲食されるものです。このような容器を含めた形態、いわゆる商品形態は、不正競争防止法が、「商品の形態を模倣した商品を譲渡する行為」を「不正競争」として規制しています(不正競争防止法2条1項3号)。
 一方、ご相談の意匠法においては、包装用容器とその中味(内容物)は、一意匠として認められていません。したがって、容器を含めてデザインされたケーキは、意匠に係る物品を「菓子」として、意匠登録を受けることができますが、外装の容器は、「包装用容器」として、別個の出願が必要となります。同様に、工具箱に入った工具セットや容器に入った文房具等も、その容器(ケース)と構成する物品ごとに出願しなければなりません。
 しかしながら、ご相談のデザインにつきましては、昨年、知財高裁において参考になる判決がありましたので紹介いたします。
 それは、「容器付冷菓事件」(平28 年(行ケ)第10034 号、(平成28 年9月21 日判決言渡)ですが、この判決において、知財高裁は、「本願意匠に係る物品である『容器付冷菓』は、社会通念上、一つの特定の用途及び機能を有する一物品であり、しかも、『容器付冷菓』の物品としての主体は、『冷菓』であるから、『冷菓』に付随するにすぎない『容器』に蓋を設ける場合があるとしても、そのことを理由として、二つの物品と認めることはできない。」と判示し、特許庁審判部の審決を取り消しました。
 ところで、意匠法はその7条において「意匠登録出願は、経済産業省令で定める物品の区分により意匠ごとにしなければならない。」と規定しています。
 その意匠法7条に規定されている「意匠ごとに」の要件については、まず、「意匠に係る物品」には、特定の用途及び機能がありますので、その意匠は一つの特定の用途及び機能を有する「一物品」であること、すなわち、「物品の単一性」があることが登録の要件です。次に、形態は、物品と一体不可分のものであることが登録の要件ですので、意匠登録の出願図面に表される形態は、全体的なまとまりを有する単一の一形態であること、すなわち、形態の単一性が求められます。
 その「物品の単一性」と「形態の単一性」について、判決は、まず、「一つの特定の用途及び機能を有する一物品といえるか、及び、出願図面に表される形態が全体的なまとまりを有して単一の一形態といえるかは、社会通念に照らして判断されるべきものである。」とその判断手法を述べています。
 そして続けて、「本願意匠に係る『冷菓』は、容器部内に冷菓部材を充填し、その上部にあん部材、もち部材を順次配設した後、これらを冷やし固めることによって製造するものと認識される。そして、冷菓部材、あん部材及びもち部材からなる『冷菓』は、『容器』と共に流通に付されるものである。使用の場面においても、通常、『容器』に入ったままの『冷菓』をスプーン等ですくって食することが想定される。よって、製造、流通、及び使用の各段階において、『冷菓』は、『容器』に充填され冷やし固められたままの一体的状態であると認められる。しかも、『冷菓』は、製造の段階から、流通、使用に至るまで『容器』から分離されることはないから、『冷菓』が『容器』から独立して通常の状態で取引の対象となるとはいえない。これらを総合考慮すれば、本願意匠に係る物品である『容器付冷菓』は、社会通念上、一つの特定の用途及び機能を有する一物品であると認められ、『冷菓』の部分のみが『容器』の部分とは独立した用途及び機能を有する一物品とはいえない。」と判示しました。
 また、容器の独立性については、「『容器』が単体の形状として独立して創作されることがあるとしても、本願意匠に係る『冷菓』は、『容器』と独立しては製造、流通及び使用することが困難であり、しかも、『容器付冷菓』としての物品の主体は、『冷菓』であるから、付随する『容器』の独立性を理由として、二つの物品と認めることはできない。」とも判示しています。
 次に、「形態の単一性」については、「本願意匠の願書に添付された図面は、形式上、二以上の形態を併記したものではない。実質的にも、容器内に冷菓を入れた状態の図面であって[図1]、冷菓と容器とは隙間なく接しており、一塊になった状態のものであるから、二以上の形態を併記したとはいえない。」と判示しています。
 したがって、裁判所は、「容器付冷菓」の意匠について、「物品の単一性」及び「形態の単一性」のいずれについても認め、本願意匠「容器付冷菓」は、一意匠一出願の要件を満たしているとの判断がなされました。
 ところで、本願意匠が一意匠と認められた背景として、判決も例示しているように、本願意匠に係る物品と同様に、@固形化粧料を容器に充填し、固形化粧料と容器が一体で流通し、取引される「容器付固形化粧料(意匠登録第1317997 号)」、A従来から一意匠と認められている「棒付き冷菓(意匠登録第1154256 号)」及びB「板付き蒲鉾(意匠登録第1211064 号)」等の登録例が本判決において、「容器付冷菓」の一意匠性を後押ししたと思料します[図2]。
 今後の特許庁における一意匠の認定に少なからず影響のある判決であり、容器と食品が一体としてデザインされ製造されるもので、流通し販売される意匠は、一意匠と判断される道が開けたと思料します。

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