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Q&A

意匠登録出願をしましたが、米国意匠特許が引用され、「意匠登録を受けることができない意匠です。」との拒絶理由通知を受けました。しかし、引用意匠は、代表図のみでしたが、その米国意匠特許に記載の図面全体を見ますと異なるところがあります。引用意匠は、代表図ですが、このような場合、どのように反論すればよいのでしょうか。
 意匠法は、その3条1項柱書において「工業上利用することができる意匠を創作した者」は、@意匠登録出願前に日本国内又は外国において公然知られた意匠(同項1号)、A意匠登録出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(同項2号)、及びそれに「類似する意匠」(同項3号)は、意匠登録を受けることができないことが規定されています。すなわち、創作された意匠について、一定の期間、排他的独占権(意23 条)を付与することにより、その意匠の創作者に対しては、製品開発のインセンティブとなる形態的価値のある意匠の創作を奨励し、その成果として製品の価値が高い意匠が市場に流通することになり、企業のデザイン開発の投資を回収するとともに企業の利益が上がり、その結果として産業の発達に寄与するという産業政策法ですので、先の「公然知られた意匠」、「刊行物に記載された意匠」等(以下「先行意匠」という。)については、その出願された意匠の創作の内容、創作された意匠の意匠的価値が、その出願前の先行意匠に存するかが、意匠登録を受けることができるか否かの重要な判断事項となります。
 したがって、その先行意匠の表れ方(表現様式)は、意匠登録出願に添付の図面と同様の様式を必要とするものではありません。
 ところで、意匠の類否判断の手法について、判決は「全体的観察を中心に、これに部分的観察を加えて、総合的な観察に基づき、両意匠が看者に対して異なる美感を与えるか否かによって類否を決するのが相当である。この場合において、公知意匠との対比において部分的な差異があっても、新たな創作的工夫により格別の美感を与える要素を付加するものといえなければ、全体より生ずる美感ないし意匠的効果の面において異なるところがないから、公知意匠の範囲内にあると解すべきである。(「スポーツシャツ事件」(平成18年(行ケ)第10004 号、知財高裁平成18 年7月18 日判決言渡)と述べています。
 前置きが長くなりましたが、ご質問について、米国意匠特許、欧州共同体意匠等、外国の登録意匠が引用された場合、拒絶理由通知書には、その意匠登録番号が引用され、時にはその代表図が添付されていますが、前記の趣旨に則り、引用意匠はその代表図に限定されるものではありません。したがって、その意匠登録番号の意匠が記載された公報の意匠全体の内容が引用意匠となりますので、本願意匠と代表図のみの対比ではなく、各面から見た意匠全体を対比しての反論が可能です。
 ご質問のようなケースが争点となった審決取消請求事件(「ゴルフボール事件」昭和63 年(行ケ)第130号、東京高裁平成元年6月14 日判決言渡)がありますので紹介します[図1]。
 本件事件は、本願意匠を、意匠に係る物品「ゴルフボール」として意匠登録出願したところ、米国特許商標庁発行の「OFFICIAL GAZETTE」(抄録)記載の意匠(代表図,FIG 2 )を引用された事案ですが、その判決において、「『OFFICIALGAZETTE』と『U.S.P.Design』は、ともにアメリカ合衆国特許商標庁から発行されたもので、『OFFICIAL GAZETTE』は『U.S.P.Design』の抄録であること及び引用U.S. P.D はアメリカ合衆国意匠登録第237983 号の意匠を表す全図面を掲載しているのに対し、引用O.G は、右登録第237983 号の意匠を表す図面のうち代表的なもの一つだけを掲載したものであることは、当事者間に争いがない。そして、原本の存在及び成立に争いのない甲第4号証によれば、引用U.S.P.DのFIG. 2(正面図)とFIG. 4(右側面図)、またFIG. 2(正面図)とFIG. 1(平面図)及びFIG. 3(底面図)とは、ディンプルの配列において明瞭な差異が存在することが認められている。そうすると、引用O.G. だけでアメリカ合衆国意匠登録第237983 号の意匠全体の要旨を認定し得ると即断することはできず、これに反する被告の主張は採用できない。」と判示されています[図1]。
 この事件において、被告(特許庁)は、「『OFFICIAL GAZETTE』は、登録意匠の要部を表すのに最も適した図面を掲載するものであって、一図で不足の場合は複数の図面を掲載している。したがって、引用O.G. だけで対比すべき意匠全体の要旨は認定し得るものである。」と反論しましたが、引用意匠が、登録(特許)に係るものであれば、その意匠の全体形態、技術文献に記載の内容全体が、引用意匠となることは当然のことです。
 ところで、意匠の実体審査において、本願意匠の新規性を否定する引用意匠として、その引用意匠の全容が開示されていることは稀であり、実体審査で提示される引用意匠は、物品を斜めから観た図又は俯瞰して観た図(多くは斜視図)の場合が多く、拒絶理由に対する意見書、また、審決取消請求事件において、このような図版における引用意匠の認定が争点となることが多くあります。
 例えば、引用意匠の形態とそれに付随する文献(説明文等)により、引用意匠の全体が把握できるとされた事案として、「発光ダイオード付き商品陳列台事件」(平成18 年( 行ケ) 第10388 号、知財高裁 平成20 年1月31 日判決言渡)、「王冠事件」(平成2年(行ケ)第95 号、東京高裁平成2年12 月23 日判決言渡)、「蛇口接続金具事件」(昭和59 年(行ケ)第6号及び第7号、東京高裁昭和60 年7月30日判決言渡)等があります。また、「配線用コンクリート枡事件」(昭和63年(行ケ)第67 号及び第68 号、東京高裁平成元年2月23 日判決言渡)においては、引用意匠は実用新案公報であり、これは意匠が三つに分解されており、引用意匠が図面どおりのものということになると、三つに別れたものになるから、三つに別れたものが引用意匠で、そうすると、本件意匠と違うということになるが、通常のコンクリート枡の取引者・需要者であればこれを一体のものとして認識把握するから、これがばらばらになっているからといって分解されたものが引用意匠ということにはならないと判示されています[図2]。

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